○ 医療関係者向けインフルエンザ最新情報

 

 

   妊娠中のおくすりに関する基本的な考え方

 

 

    流産の自然発生率は15%前後、先天異常の自然発生は2~3%と言われています。

    妊婦さんに薬を処方する場合にはこの点について説明する必要があります。

 

 

 

 タミフル(リン酸オセルタミビル)

 

  妊娠と薬情報センターでは妊娠初期にオセルタミビルを使用した女性に妊娠結果の調査を行っていますが、2005年10月から2009年4月までに回答が得られた25人では、2人が自然流産、1人が人工妊娠中絶、22人が先天異常のない新生児を出産しています。
  また、虎の門病院の報告では、妊娠初期にオセルタミビルを使用した65人の妊娠では、生児を出産したのが64人でそのうち1人に先天異常がみとめられ、他の1人は自然流産という結果でした(日本病院薬剤師会雑誌 第45巻4号547-550 2009年)。


  両者を合わせますと、妊娠初期にオセルタミビルを使用した90人の妊娠結果は、3人が自然流産、1人が人工妊娠中絶、86人が生児を出産し、そのうち1人に先天異常がみられましたが、通常の発生率と比較して高いものではありませんでした(CMAJ. 2009 Jul 7;181(1-2):55-8. Epub 2009 Jun 15)。

 

 調査人数が少ないため、この調査結果から胎児への影響がないと結論づけることはできませんが、一般的な先天異常発生率を大きく上回らない可能性があります。また、発売後の期間が短いため、長期的な発達への影響についてはまだわかりません。今後、先天異常や長期的な発達への影響に関する大規模な疫学研究が行われる必要があります。

 

 

 

 リレンザ(ザナミビル水和物)

 

 

  ザナミビルは吸入で使用され局所で作用するため、母親の血中に移行する量もごくわずかであり、さらに口に残ってしまった分を飲み込んでしまったとしても、それも血中にはほとんど移行しないことがわかっています。


  こうしたことから妊娠中にわずかの期間(通常の使用であれば5日)この薬剤を使用したとしても、胎児に重大な影響を及ぼす可能性は少ないと考えられます。

 

 

 

 

 インフルエンザワクチン

 

 

  現在日本で使用されているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。
  妊娠初期のインフルエンザワクチン接種の催奇形性に関する大規模な疫学研究はひとつあります。妊娠4ヶ月までにインフルエンザ不活化ワクチン接種を受けた母親から生まれた650人の児において、大奇形、小奇形の発生率は増加しなかったと報告されています(Birth Defects and Drugs in Pregnancy, 1977)。他にも第1三半期に不活化インフルエンザワクチン接種を受けた子どもにおいて先天奇形発生率の増加は認められなかったとの小規模な研究による報告があります(J Infect Dis 140(2):141-146, 1979, Am J Obstet Gynecol 140:240-245, 1981)。
生ワクチンではないので重篤な副作用は起こらないと考えられ、一般的に妊娠中のすべての時期において安全であるとされています。


  妊娠中のインフルエンザウイルス感染は、重度の合併症や入院のリスクを高めるとの報告があります(Am J Epidemiol 1998;148:1094–102, Br J Obstet Gynaecol 2000;107:1282–9.)。アメリカの予防接種諮問委員会Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)による勧告では、インフルエンザシーズン中に妊婦である女性のインフルエンザワクチン接種を妊娠週数に関わらず推奨しています(MMWR 2009, Vol. 58 RR-8)。

 

  妊娠中は胎児を免疫学的に寛容するために、母体の免疫機能は低下傾向にあり易感染性です。さらに、妊娠初期では悪阻による体力低下、中期以降は子宮の増大による他臓器への圧排所見の1つとして横隔膜の挙上による肺活量の低下、循環血漿量の増大による心への負荷が加わり心肺機能の低下がみられます。これらのことから、妊婦はインフルエンザ感染症に関しては感染しやすくさらに重症化しやすい身体状況にあると考えられ、積極的なワクチン接種が世界的に勧められております。

 

  国立成育医療センターでは、妊娠中のワクチン接種による母体の免疫獲得能力、出産までの免疫持続力、赤ちゃんへの免疫移行に関し研究させていただいております。前述のとおり母体の免疫機能は低下傾向にあり、ワクチンによる免疫獲得能力が妊娠していない時より低下することが心配されておりましたが、現在までの当院での研究の結果からは、不活化インフルエンザワクチンは妊娠中の免疫の変動に関係なく約90%が免疫を獲得することが可能で、全ての時期でワクチン接種は免疫獲得に有効であることが想定されました。ワクチン接種後に獲得された免疫は少しずつ低下しますが、出産時にはまだ感染防御に十分とされる免疫力が残っており、さらに母体の免疫が胎盤を介して児へ移行することにより、出産した赤ちゃんも出生時に既に感染防御に十分な免疫を獲得していることが証明されました。また、2002年の開設以来シーズンあたり150人前後の妊婦さんがワクチン接種を受けていますが、副反応、胎児への影響もみられておりません。従って、妊娠中のインフルエンザワクチン接種は母子ともに有用なワクチン接種と考えられます(J Med Virol 2009, in press)。
本研究にご参加くださった方々に深く感謝申し上げます。

 

 

 

なお、厚生労働省でも、新型インフルエンザワクチン接種時の妊婦の安全性について、及び抗インフルエンザウイルス薬投与時の妊婦の安全性について検討されています。
下記のリンクから資料をご覧ください。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/dl/s0212-6l.pdf 

第5回新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会の全体の資料はこちら
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/s0212-6.html 


 

 

 


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