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ぜん息


ぜん息とは

ぜん息ってなに?

ぜん息は、急に空気の通り道となる気管支が狭くなってしまい、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」し始めて呼吸が苦しくなる状態(急性増悪、いわゆる発作)を繰り返す病気です。ぜん息では、気管支に慢性的な炎症が起こっていることが分かっています。この炎症のために簡単な刺激が入っただけでも気管支の壁が腫れたり、粘液(痰)が分泌されたり、気管支の周りの筋肉が縮もうとしたりして気管支が狭くなってしまい発作が起こります。そのため、この慢性的な炎症を治さない限りいつまでも発作が出現します。さらに、長く炎症が続いてしまうと気管支自体が硬くなって治療が難しくなる「リモデリング」といった状態に陥ってしまいます。

ぜん息を起こす悪化要因

ぜん息症状を悪化させる要因には以下のようなものがあります。

悪化要因の例

・風邪などの感染症  ・ダニやペットの毛など(吸入タイプのアレルゲン) ・天候や大気汚染  
・受動喫煙  ・激しい運動  ・カビ  ・ストレス  など

上記の中で自分の症状がどのような悪化要因と関連しているのかを正しく知ることでその対策を考えることができます。


ぜん息の検査・診断

何度も「ヒューヒュー」「ゼーゼー」したり風邪をひいた後にせきが長引いたりするのはぜん息の可能性があります。一方で、ぜん息以外にも同じ様に症状を起こす病気もあります。そのため、問診(ぜん息が疑われる場合には詳しい症状の経過や家族のアレルギー、生活環境などの確認)や診察、検査(血液検査、胸部X線検査、呼吸機能検査、呼気NO検査、気道過敏性試験、気道可逆性試験:全ての検査が全ての方に必要な訳ではありません)を行って総合的にぜん息を診断することが必要になります。

ただ、乳幼児(5歳以下)の方はもともと気管が大人に比べて細く、やわらかいのでぜん息以外でも症状が起きやすいという特徴があります。また、呼吸機能検査や呼気NO検査などの検査を低年齢で行うのは難しい検査です。そのため、診断が難しい場合には一度ぜん息の治療を開始して発作が減るかをみる場合もあります。

呼吸機能検査

大きく息を吸った状態から、一気に息を吐ききる検査で、スパイロメトリーとも呼びます。気道がどの程度狭くなっているかを客観的に評価する方法で、ぜん息の診断や重症度、治療効果などをみるのに役立ちます。

ピークフロー測定

力いっぱい息を吐くときの、吐き出す速度を測定する検査です。ピークフローメーターという簡単な器具を用いて、自宅でも測定することが出来るため、毎日の状態をみるのに役立ちます。

気道過敏性検査

発作が出やすいような状態にして、呼吸機能検査を行い、どの程度呼吸機能が低下するかを調べる検査です。薬物吸入負荷試験(発作が起こる可能性がある薬物を低濃度から吸入して検査をする方法)と、運動負荷試験(運動をした後に検査をする方法)とがあります。

呼気一酸化窒素(NO)検査

吐く息の中に含まれる一酸化窒素(NO)の量を測る検査です。一酸化窒素は、気管支の炎症が悪くなると上がることが分かっており、この値をみることで、ぜん息の状態や、正しく治療が出来ているかを評価するのに役立ちます。


ぜん息の治療と国立成育医療研究センターの方針

ぜん息の治療については普段の治療(長期管理)と発作への対応を分けて考える必要があります。

長期管理においてはぜん息をよく理解した上で、次の3本柱を実践することが大事です。

  • ぜん息を悪くする原因を減らす       :悪化因子への対する対策
  • 気道の炎症を抑えるために薬を使用する   :薬物療法
  • 発作が起こりにくくなるように体力をつける :体力作り

悪化因子への対策

ぜん息の悪化要因について個人毎で対策をたてます。対策の例としてダニ(日本では特に悪化因子として頻度が高い)であれば自宅の掃除掛けや布団の管理をこまめにすることでダニの繁殖を減らす対策を行うなどといったものです。

治療中の方で「薬はなるべく減らしたい」と思われる方も多いと思いますが、炎症の原因となるこの悪化因子への対策を行うことは薬を減らすためにも有効と言えます。

薬物療法

長期管理薬(主に炎症を抑えるために普段から使用して発作を予防する薬剤)を使用します。主な長期管理薬として吸入ステロイド薬、ロイコトリエン拮抗薬などがあります。

吸入ステロイドは気管支に直接的に効果を発揮して炎症を鎮めてくれます。直接的であるため、少ない量で効果が得られ、内服や点滴を長く継続した時のような副作用は起こりません。年齢に応じていくつかの種類の薬があります。全年齢でぜん息長期管理の主役とも言える薬です。吸入薬は適切な方法で吸入をしないと、効果が十分に発揮されないため、吸入方法をしっかりと身につける必要があります。

ロイコトリエン拮抗薬は内服の薬です。吸入ステロイドに比較すると炎症を鎮める効果は弱くなりますが、内服という使用のしやすさがあります。比較的に軽症の症例でこの薬剤だけで治療を行うこともありますが、より重症な例では吸入ステロイドといっしょに使用することもあります。

また、最近では高用量の吸入ステロイド薬や複数の薬剤を組み合わせても症状が安定しない重症のぜん息患者さんに対して、生物学的製剤が使えるようになりました。生物学的製剤は、生物から産生される物質を応用して作られた薬で、炎症に関係する物質の働きを抑える作用がある注射薬です。現時点で小児に使用できる生物学的製剤は、オマリズマブ、メポリズマブ(いずれも6歳以上)、デュピルマブ(12歳以上)の3種類です。

体力作り

適度な運動やバランスとのとれた食事、十分な睡眠、規則正しい生活などがあります。ぜん息の悪化因子として激しい運動があるため、運動はしない方がよいのではと思われるかもしれませんが、成長期のお子様ですので十分な治療や対策を行って運動をしても問題ないようにするという考えが重要です。また、肥満もぜん息を悪くしてしまう原因であることが分かっていますので適切な生活習慣も大事です。


難治性ぜん息

ここまでぜん息について一般的な治療について述べさせて頂きました。近年、治療薬の進歩により、ほとんどの方がこのような治療でぜん息をコントロールできるようになっていまが、一般的な治療で十分コントロールできない難治のぜん息患者さんも一部いらっしゃいます。そのような患者さんには、前述のように生物学的製剤を使用することがあります。しかしながら、このような場合には、本当にぜん息の診断で合っているのか(他の病気の可能性がないか)、きちんと治療が出来ているか(毎日正しい手技で吸入出来ているか)、ぜん息のコントロールが悪い原因(環境や心理的な要素)がないかなどを十分に見極める必要があります。特に、声帯機能不全(VCD)や誘導性喉頭閉塞症(ILO)などが、ぜん息と間違えられることがしばしばあります。これらは、様々なきっかけ(運動や不安・心理的ストレスなど)により喉頭が狭くなり、ゼーゼーや呼吸困難といった症状を引き起こす疾患です。医師に決められた治療を十分に行っているにも関わらず、発作が頻繁におきて学校に行くことができないなど困っている場合には、心理学的アプローチや長期入院を考えます。

心理的アプローチについて

発作の原因となる心理的要因の代表として兄弟葛藤を例にあげたいと思います。これは、兄弟間での保護者の愛情の奪い合いによって起こります。そのため、他の兄弟に向いた親の注意を自分に向けたいときに発作が起こるといったものです(本人に自覚がある訳ではありません)。このような場合、発作が起こっているときではなく、発作が起こっていないときに本人のストレスマネジメントをすることで多くが改善することが分かっています。

このように難治のぜん息では心理的なアプローチを行うことで発作が減少することがあります。上記は一例ですが、発作がどのような時に起こっているのか、周囲の状況はどうかなどを注意深く観察して対応を決定してあげる必要があります。しかしながら、日本ではこのような対応に習熟した施設が少ないのが現状です。当センターでは心理的アプローチが必要な方に対しても適切なアドバイスを行っています。

長期入院について

難治性ぜん息で頻繁に発作を起こしているような方は気道の炎症が長く続いており、軽いぜん息の方と比較して気道が過敏になっています。そのため、炎症や過敏性をとるために長く環境の整った場所(=病院)に入院した方が将来の見通し(=予後)がよい場合があります。また、前述のような悪化因子対策や心理的アプローチについても入院して密に医師と相談しながら治療を行う方がより効果をあげられる場合があります。

当センターではこのような長期の入院がより予後がよいと判断した難治なぜん息患者さんに対して長期入院を勧めさせていただく場合があります。ただ、学童期の患者さんにおいては学校で学ぶはずの勉強や社会生活は重要です。そのため、治療と勉強や社会生活を両立できるように院内学級の体制を整えています。


自宅でのぜん息発作への対応

ぜん息発作には強いぜん息発作のサインとして下のようなものがあげられています。

強いぜん息発作のサイン(小児)

  • 遊べない、話せない、歩けない、食べられない、眠れない
  • 顔色が悪い、ボーっとして興奮している
  • 強い「ゼーゼー」がある、ろっ骨の間がはっきりとへこむ、脈がとても速い など

強いぜん息発作のサイン(乳幼児)

  • 母乳やミルクが飲めない、咳き込みで眠れない
  • 唇や顔色が悪い、機嫌が悪くて興奮して泣き叫ぶ
  • 激しく咳き込み嘔吐する
  • 息を吐く特に強い「ヒューヒュー」「ゼーゼー」「ゼロゼロ」やうなり声がある
  • 呼吸が速い・あらい、息を吸うときにろっ骨の間などがはっきりへこむ、小鼻が開く
  • 胸の動きがいつもと違う など

これらのような症状がある場合は直ちに医療機関への受診が必要となります。ただ、上記のようなサインがなくても発作時に対応するための薬(後述)をお持ちでない場合や、薬を使用して1~2時間経過しても改善しない場合、呼吸困難感が強い場合は原則として医療機関を受診することが勧められています。

発作治療薬(主に気管支を拡げる作用を持つ薬剤)

主な薬にβ2刺激薬などがあります。β2刺激薬は発作が起きた時の狭くなっている気管支を拡げる効果があり、即効性(テープの薬については効果が出るまでに時間がかかるので発作の際には不向きです)があります。ただ、注意して頂きたいのはこの薬には炎症を抑えるような効果はありません。そのため、発作が起こる毎にこの薬を使うだけの対応ではいつまでも炎症が改善せずに気管支が硬くなるなどの問題が出てきます。発作が出た時には使用が必要ですが、まずは普段の治療で発作が出ないようにすることが大事です。

治療の実際

ぜん息の診断がついた場合には、まず前述したような3本柱を踏まえて対策や治療を選択します。吸入薬を使用する場合などは手技についてPAE(アレルギーエデュケーター)や看護師、薬剤師などとも連携して適切な方法を習得します。ぜん息治療の目標は発作がない状態を保つことです。ただ、発作が出現した場合やピークフロー(息を吐く力をみる簡便な道具で自宅で毎日行います.息を強く吐ける方が対象になります)」の値が普段より悪い場合に備えて程度に応じた対処方法(「アクションプラン」という言い方をします)を事前に確認することも大事です。

治療開始後は、現在の治療でよいか定期的に経過をみます。具体的には発作の頻度や強さ、その時の悪化因子、ピークフローメーターの値を「ぜん息日誌」に記載し、医師に確認してもらいます。医師はそれまでの発作の状態や治療を総合してぜん息の重症度を推定し、その上で対策や治療薬の見直しについて話し合います。


受診方法

外来は、救急センターを除いてすべて予約制ですので、当院で受診される方は『事前予約』が必要です。

国立成育医療研究センターでは、事前予約制を導入しております。当院での受診を希望の方は他院からの診療情報提供書(紹介状)をお手元にご用意の上、予約センター(電話 03-5494-7300)で予約をお取りになってからご来院ください(予約取得時に、紹介状の確認をしております)。紹介状をお持ちでない場合、別途選定療養費がかかります。詳しくは、予約センターにお問い合わせください。
なお、緊急で受診が必要なときは、現在かかっている医療機関の医師から直接、医療連携室(TEL:03-5494-5486 (月~金 祝祭日を除く 8時30分から16時30分))へご連絡をお願い致します。

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