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実例(補聴器について)


ようこそ補聴器のお部屋に。
部屋の主は、高橋 徹(70 ウン歳のおじいちゃんです。)孫が高度難聴で、センターのお世話になっています。
センターからお勤めいただいて、はじめは嫌がっていた孫が、補聴器をつけて音の世界に入るまでの経験をご披露します。ご参考まで・・・。


子供の補聴器ってどんなもの

これはようやくおすわりができる程度だったときに使用していた補聴器です。耳の穴の型を取って作った「イヤーモールド」にスピーカーの部分をとりつけ、音を集めたり増幅したりする部分を体の別のところに取り付け、その間を電気信号の行き交うケーブルでつないで使います。

成長して補聴器の役割がわかるようになると、無闇に外さなくなりますし、外しても自分で耳元に持って言ったりします。耳も大きくなると、耳架け式が使えるようになります。もし神経組織が発達して音をうまく捉えられるようになれば、小型のものでよいようになります。
右はかけ方の改造したもの、左はそれほど大きな音を出さなくてもよい耳に使う、小型のものです。


補聴器の仕組み

補聴器の集音部です。 上の、透明で曲がったノズルの先と、ノズルの付け根に孔があり、音はそこから入ります。 どのように保持してもかまいませんが、この孔を塞いではいけません。

黒く見えるのは、ケーブルを脱着するソケット。 その上の横一文字は、次の写真で説明する、音量調節ダイヤルです。 その左に、スイッチの棒が突き出ていたのですが、ニッパを使って切り落としすことにしました。このスイッチは、電話用・電話と会話用・機能停止用を使い分けるものですが、寝返りを打つ程度で機能停止になったりします。会話用のところに入れて切り落とし、厚いテープを貼って止めました。

ダイヤルに、数字の3が見えます。音の大きさを示しますが、ABRの検査結果などを元に、先生から指示された値が3だったのです。

このダイヤルは、実によく動いてしまい、0になれば聞こえなく、装着の意味がなく、5や7になれば大きすぎ、不快で、ハウリングも猛烈におきます。テープで固定しましょう。この場合のテープは、イヤーモールドを付けるのとは違った、厚手のきわめて強いものを使いましょう。それでも時々点検しましょう。

図の位置で補聴器の集音部の左の上をつま先で掻きだすと、20度くらい回転してカチッと止まります。
スイッチが切れ、補聴器はお休みです。

補聴器の左の端の下のほうを、上の図のときと反対方向につま先で掻き出し、回転させると、電池が現れます。逆さにして振ると、簡単に外れます。

電池です。大人の小指の先くらいで、お子さんは飲み込む危険があります。



青色の薄いプラスチックが貼ってあるのは、空気を遮断しているので、使うまでは、剥がしてはいけません。はがすと、放電が始まります。
6個で1500円程度。
どこのホームセンターでも売っています。
プラスとマイナスがあります。
集音部の中にあるマイクロチップは、直流電気を要求します。プラスとマイナスの区別が必要です。
スイッチは、入れっぱなしでも2〜3週間は保つようですが、少なくとも耳に装着するとき、外すときには、切りましょう。
ハウリングでお子さんを強度の補聴器嫌いにしないためです。



集音部の黒い部分が、ケーブルがはまるソケットです。 かたくはまり、使っているとき抜け落ちたりはしません。


イヤーモールドとは

耳の孔の型と大きさは個人差が多く、孔の中心線は、カーブしています。プラスチック製のイヤーモールドは、一人一人の患者の耳の孔に,数分で固まるゴムのようなものを流し込んで原型を作り、原型から型を起こし、型にプラスチックを流し込んで作ります。 曲がったものを曲がったものに差し込むのですから、力任せに押し込んでも入りません。時計回りにまわしながら、入れます。 そうです。さざえやバイ貝を焼いて、金串で取り出すことを思い浮かべてください。

奥の方から右手前の方向に伸びているのが、耳孔に入る部分です。そのほかには、耳の襞に引っかかるように考えた、わずかな突起があります。

耳の奥から外をのぞいた位置においてあります。上のほうが茸ののように、大きくなっていて、これによって、耳の襞にはまり、粘着テープによる装着が容易になりました。


ハウリング

補聴器の耳の当てる部分から出た音が直接集音部分に入ると回りまわってどんどん増幅され、キーンと高い大きい音がでます。
集会でマイクのテストをするときにでる音です。
野外で聞くなら我慢も出来ますが、難聴でも耳の中でハウリングを聞かされてはたまりません。
苦痛で泣き出したり、補聴器を付けることを嫌がるようになります。
耳の型を取って作ったといっても、そう精密なものではありません。
抜き差しするものだから、隙間だらけなのが当たり前です。これを防ぐには、

  1. 耳に完全に装着するまでは、必ず電池のスイッチを切っておきます。
  2. 自分ではめなおすことが出来るようになるまでは、粘着テープで止めておきます。

粘着テープは、端の部分の保護紙を剥いで、まず、もみ上げの部分に貼り、イヤーモールドを入れた後で、イヤーモールドにテープをかぶせ、耳朶の裏まで貼りこみます。これで外れるようでしたら、さらに1枚使って耳の後ろの、後頭部にまで貼り付けます。耳の周りの髪は、刈っておきます。

耳孔の形によって外れやすい場合もあるのでしょうが、本人が引き抜かなくても1分と持ちません。そのつどハウリングがおきます。そこでテープで止めることを考えました。耳栓を、粘着テープで止めやすい形のものに変えてもらいました。費用は患者が自費で支払うことになります。6千何百円でした。

1年が経つと、ハウリングをそんなに怖がらなくなりました。今は、たまに補聴器を引きちぎっても、それをもう一度耳元に持っていこうとします。はずした粘着テープも耳にあてようとします。これが音の世界につれていってくれる道具だと知っているのです。

補聴器をはめて、スイッチを入れて、子供の耳に自分の耳をつけて、果たして補聴器が機能しているか、集音孔のあたりを指先でこすって、ガサガサという音で確認していたら、子供のほうも、自分で指先でガサガサとやるようになりました。

最近は、集音部とイヤーモールドの部分を近づけて、ピーっと言う音を確認して電池がまだあるか確かめていますが、平気になりました。耳の中で鳴らさなければよいようです。


補聴器の固定

補聴器を外されたり引きちぎられたりしないための、次の工夫は集音部をどこにつけさせるかです。最初は、洋服にポケットをつけてみました。付けるならば体の前の方に・・・とのご指導ですが、すぐ引っ張り出しました。見えないところ、結局左後ろを選択しましたが、そこから拾える音には限度があるわけで、これは、大きい欠点になります。
ちぎられては修繕し・・・と言うのが、考えていたより大きな仕事になりました。ポケットは、まだあまり動き出さないうちには有効ということでしょう。

右を下にして横になっているところを、頭のほうから見たところです。補聴器の集音部分を入れたポケットが見えます。ケーブルは、引きちぎられないよう、腹巻の下を通しています。









ある聾学校の、就学前のお子さんの相談の会合で目にしました。

両耳からたれたコードは大きなワッペンに付いた、二つの集音部に導かれていました。

活発に動いているお子さんは、粘着テープも使っていないのに、外れることはあまりないとのことでした。

生地屋さんからフェルトを買ってきます。

どうせなら三つほど作りましょう。

一つ作るのと時間が変わらないものです。

直径が7センチ以上の円が必要です。

接着剤は、ボンドでも、セメダインでも、布用を売っていますが、木工用でも大丈夫。塗って固めると、芯を入れたような、しかも、適度に弾力があるものが出来上がります。

安全ピンも、大型で、針先のとがっていない本当に安全なものが、手芸店などに売っています。

白く見えるのは、ゴムひも。細いほうでノズルを止め、太いほうで集音部本体を止めます。細いほうは、小さな矩形の孔を空けて3重の芯の中に端部を接着し、太いほうは、背後に大きな矩形の孔から導いて、端部はマジックテープで、表の集音部を適当に締め付けながら止めることが出来るようにしてあります。

表面に犬の絵がありますが、スキャナーで写し取って、アイロンプリント用紙に印刷し、切り抜いて、アイロンを使って、貼り付けたものです。


補聴器の掃除

イヤーモールドは、ゆっくり力をかけるとスピーカーから、簡単に外せます。元通りはめ込むときも、カチッと音がして、正確にはまります。

汚れている穴は、カーブしていて、縫い針で糸を通せません。木綿糸を指先でねじって、回しながら通します。

左手の薬指と小指で糸に端をつかみ、左手の親指と人差し指で、糸の通ったプラスチックをつまみ、右手で糸の端をつまんで、やや大きく回しながら、力を加減してゆっくり引き抜くと、実用上差し支えない程度に、きれいに取れます。


おまけ

音でも振動でもなんでも刺激を与えつづけたいのがまわりの気持ち。 セラミックスピーカーを使ってみましょう。

薄く軽いので、胸や頬のあたりに軽く押し付け続けても疲れませんし、肩甲骨のあたりで、シャツの上に両面テープで止めることもできます。

ステレオにつないで、リズムっぽいものを聞かせると、合わせて体を動かします。筋肉体操が必要なお子さんにもよいのでは・・・ 。

耳の機能を助け、物事の関係を理解して言葉を覚えるため、こんな「スイッチおもちゃ」を作ってみました。
ボタンを押すと、たとえばりんごの絵がぱっと明るく照らし出され、「りんご! りんご! りんごだよ。りんごをたべようよ」と親しい人の大きな声が聞こえます。
いくらたたいても壊れない大きなスイッチを秋葉原で買ってきました。

うひとつは、嵌め絵、三角の大きな板をうまくはめると、たとえば,バナナの絵が完成すると、スピーカーから、
「よくできたねぇ。バナナ!バナナ!バナナだよ・・・」
と大きい声が出るものです。遊びの要素があると、キャッキャッと喜んで使ってくれます。


挫折!そして再び立ち上がる

幼児用の、長いケーブルを垂らした補聴器の時期が1年ほど続いて、言葉はまだでないものの、音の世界を完全に理解し、呼べば振り向くようになりました。

良く動き回るようにもなりました。

そこで、再びABRを測っていただくと、1年前に90dbという高度難聴であったものが、一部の周波数で50dbという値が出るようになっていました。

運動量も増えたことでもあり、耳架け式に変えることになりました。

もう、補聴器の役目は十分理解しているという、親たちの欲目による期待もありました。

小さな補聴器はとても魅力的にみえました。

目立たず、CD並に音が良かったのです。高級なステレオのようにイコライザーがついていて、分解しないで外から周波数別に増幅率を変えることができるのです。

これなら複雑な子音だって聞き分けられるのではないかと、親たちも勝手に期待したわけです。

ところが、この補聴器に変わってから、2カ月ほど、補聴器の装着をあきらめたことがありました。

「この子は言語の獲得が出来ないのではないか」とさえ思いました。

どうしてそんなことになったのか?そこからどうやって脱出できたのかをお話しましょう。

補聴器をつけなくなったのは、またしてもハウリングです。

じっとしていればしばらくはハウリングなしでいられるのですが、首を振ったりするとすぐ始まります。

理屈から言えば、耳穴と耳栓の間にわずかな透き間があれば、ハウリングが起きます。

今度の耳かけ型のばあい、集音部とスピーカー部の間隔が、3センチ程度の至近距離にあるわけですから、ハウリングを起こし易いわけです。

業者の技術者の人は、「普通この程度で十分なのですがーーー」というので、私どもが我が儘なのかなと思いました。

言語療法士の先生も、「ハウリングがあっても音声も聞こえているから言語獲得上は有効ですよ」とおっしゃるのですが、本人が泣き叫んで装着を拒否します。

こんなことで言語獲得をあきらめなければならないのかと思いながら2カ月が経過し、センターで定期的な診察を受けたとき、「イヤーモールドは、患者によっては何度も作り直す必要があります」とご指摘をいただきました。

そのとたんに思い出したことがあります。耳架け式のイヤーモールドの型を採るとき、泣き叫ぶ孫を押さえ付けながら耳元を見ていると。泣き声に堪りかねたのか、業者の技術者の人が、「もういいでしょう」といって耳の中のある程度固まった緑色のゴム状ものを取り出しました。

それは、上等な切り餅のように5センチほどにすうっと伸びて、すぐに1センチほどに縮みました。

「便利なものがあるものだ」とその時は思いましたが、原因はこれだったのではないか。

本来の耳穴の大きさまで縮まず、細くて長いイヤーモールドが出来てしまったのではないかと気が付いた訳です。

こういう時、患者は、関係者の反感を買わないようどうやって指摘したものかと苦心する訳ですが、意を決して、丁重、かつ、誤解の余地のない表現で、お願いしました。

今度は、孫が泣こうがわめこうが十分な時間をかけましたので、太い型がコロッと採れました。

新しいイヤーモールドができて、後は全部うまく行ったかというと、そんなことはない訳で、ハウリングの記憶が生々しいからか、およそ耳につけてくれません。

こういうときは母親の出番です。おいしいものを食べさせてもらっているときや、ハム太郎のTVをいっしょに見ている時がチャンス。

必ず電気を切って挿入し、耳の奥の方によく圧し付けてから電気をいれます。

一度うまく行けばもう大丈夫。2カ月の空白があったにもかかわらず、すぐさま音の世界にはいっていきました。

念のためもう一言。今度の新型は、スイッチで操作したのでは間違い易い点があります。気を付けていないと、正しく入れていても何も聞こえず、かえってわずかな音の刺激さえ妨げてしまう結果になります。

レバーを1回押すごとに音が出たり出なかったりします。正確に言うと、音の聞こえないときは、電磁波による放送を聞くモードになるためで、この設備は、聾学校などで、備えているところがあるようです。

いったん耳に着けてしまうと、音波を受ける状態になっているのか電磁波を受ける状態になっているのか識別する方法がありません。むやみにスイッチを押すと、無音状態にしてしまうことになりかねません。

これを防ぐ方法は、ただひとつ。スイッチを使わず、電池の方を切って、装着した後で電池を作動させる方法です。電源を入れたときのデフォールトの設定が音波を受けるようになっているからです。

やりかたは、このページの「補聴器の仕組み」に書いてある方法と同じです。

だから、スイッチバーの方は、使わないことにして、電池のつまみを少し回して電池が切れた状態で耳に挿入し、イヤーモールドを耳の奥の方によく押し付けて音が漏れないようにしてから、つまみを今度は反対方向に回して電池をいれ、補聴器をスタートさせることを習慣付けるようにしましょう。

まもなく、とても良いことがおきました。

成長に応じて補聴器の効用を理解した孫は、暴れまわって補聴器が抜けかけ、ハウリングが起きると、自分の手のひらでイヤーモールドを押して耳の奥に押し込み、ハウリングを解消し、何事もなかったように遊び続けています。

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